沖縄テロワール

今回の沖縄の旅のひとつに、沖縄県の食文化を知ること。沖縄はアメリカの駐屯地であることもあり長い歴史や諸外国との交流の中で、土地の風土と歴史、人々の生活に根付いて育まれた独特な食文化があります。しかし、近年、ライフスタイルや価値観の多様化などにともない、食を取り巻く環境が大きく変化したことや、食文化を支えるおばぁ料理研究家などの人材の高齢化年中行事の簡略化等による行事食の衰退、若い世代を中心とした伝統料理離れが進んだことなどにより、沖縄の伝統的な食文化が失われつつあるというのを耳にしておりました。こういった現象は沖縄に限らずですが、私自身のバイヤー活動で20年ほど前に沖縄野菜を仕入れるのに現地の農家さんとたくさん飲みにケーションしながら知った”命薬(ぬちぐすい)”という言葉。「食はすべて薬」つまり、医食同源の考え方であったり、”おばぁの言うことは絶対”。そんな文化も色濃くあった。そして太陽燦々と浴びた沖縄独特の野菜たち。沖縄こそ食の原点に通じる食文化ががり、沖縄テロワールがある。そこを知ることは日本にとってもアイデンティティを知ることなのではと思います。

宮廷料理

1492年から450年もの間、琉球王国とよばれる独立国だった沖縄。王国では、宮廷行事や儀式、接待などのために華やかな宮廷料理が誕生し、その発展には、15世紀以降の中国皇帝の命により琉球王国を訪れた冊封使(さっぽうし)と呼ばれる中国からの使者をもてなす際に歓待料理などで宮廷の役人を中心に食されていたそうです。そして17世紀以降の薩摩(現在の鹿児島県)との交流が影響しており、食材や調理技術が伝わったとされております。  

沖縄県那覇市首里城近くにある琉球料理「赤田風赤田とはお店のある首里城付近の地名。まさに沖縄特有の赤土が広がる地域。首里駅は「赤田首里殿内」という古い童歌もありおもしろい歌詞なので参考にしてみてください。

琉球料理赤田風のお料理は琉球王朝時代に首里城内及び迎賓館において、主に来賓を饗す料理として振る舞われたと云われる琉球宮廷料理が食べられます。予約必須ですが、一度足を運ぶ価値ありです。

①ポーポー

ポーポーとは、油味噌を小麦粉の生地でくるくると巻いたおやつ。旧暦の5月4日に子供たちの健やかな成長を願って、各家庭で「ポーポー」を作り、お供えする習慣があるそうです。黒糖入りの生地を巻いたものは「ちんびん」と呼ばれることも多いのですが、本来「ポーポー」は小麦粉生地にアンダンスー(油味噌)を巻いたものを指します。
翌日の旧暦5月5日は本土から伝来した「菖蒲の節句」です。本土ではこの日に菖蒲酒を飲み菖蒲湯に入る習慣がありますが、沖縄ではあまがしに菖蒲の葉を添えて食べるのが行事食です。菖蒲の葉には抗菌作用があるため食中毒予防にもなり、爽やかな香りは邪気を払うと伝えられております。

②中味のお吸い物

沖縄の方言でナカミヌウシームンといい「中味汁」とも呼ばれる伝統料理。中身とは、豚の内臓のこと。豚の胃や腸をカツオの出汁に煮込み、醤油と塩で仕上げる。豚肉がよく食べられる沖縄県では、余すところなく料理に使うことから「鳴き声以外は全て食べ尽くす」と言われているそうで(笑)まさにエシカルな料理の原点がここにある。上品な器に盛り、慶事や正月などに縁起料理としても振舞われるそう。丁寧な下処理が重要で内臓を何度もよく洗っているため、まったく臭みもなく、かつおと干ししいたけ?のお出汁が身体に沁みわたり、何杯で食べられそうな、とてもおいしいすまし汁でした。

言われないと、内臓とわからないかもしれません。椎茸も入っており、とても滋味深いお椀でした。

②芋くずアンダギー

王朝時代はお菓子が非常に貴重なもので、庶民は口にすることができなかったそうです。かつては王朝菓子であったものが、現在では庶民でも当たり前に食べることができるようになり、そのひとつにサーターアンダギーがあります。その歴史は、500年以上前の王朝時代まで遡ります。お隣の中国に渡り、調理技術を学んだ宮中の料理人たちが帰国して作ったお菓子が、サーターアンダギーだといわれています。実は、中国の「開口球(かいこうきゅう)」、台湾の「開口笑(かいこうしょう)」という、サーターアンダギーによく似た揚げ菓子があるそうです。砂糖が貴重な時代だったため、高級なお菓子として扱われていました。サーターアンダーギーの名前は首里方言からきていて、「サーター」=砂糖、「アンダ」=油、「アギ」=揚げるという意味。なるほど、方言を紐解くとそのままですね(笑)「 砂糖の天ぷら」と呼ばれることもありますが、 名前のとおり砂糖が多く入っているので、揚げたてはサクッとした食感に仕上がりおいしいです。赤田風のサーターアンダーギーはよく食べるものとは全く別もの?で、葛粉が入っているのでしょうか?もっちりしていて粉っぽくなく、とてもおいしかったです😋

もっちりしていて、ほんのり甘くてとてもおいしい♪いくつでも食べれそう。

③昆布(クーブ)イリチー

「クーブイリチー」の「クーブ」=“昆布”、「イリチー」=“炒め煮”の意味。
千切りにした昆布を炒め、豚肉やかまぼこなどの具材と、出汁やしょうゆ、砂糖などで煮込んで作る、沖縄の郷土料理です。さまざまなイリチーの中でも、主にハレの日に作られたのが「クーブイリチー」です。
昆布=「よろこぶ」とかけて、結婚式などの祝い事に欠かせない料理となっています。
沖縄県では家庭でも一般的に作られておりますが、県内外の沖縄家庭料理の店をはじめ、最近では学校給食で出されていることもあるようです。学校給食でも昆布=「よろこぶ」の意味合いをもっと伝えていければと思いました。

④ドゥルワカシー

沖縄伝統野菜の田芋(ターンム)とその茎(ずいき)を、豚肉や干ししいたけといっしょに豚だしで形が崩れるまで煮た料理。もちもち♪とした食感の中にカツオ出汁の旨味や田芋の風味が広がり、泡盛が飲みたくなる味わい。ねっとりとしていて、うま味がものすごい!これはめちゃくちゃおいしい!今回のコースで一番気に入ったメニューでした!出汁のきいたやさしい味わいなので、いくらでも食べれます(笑)。『ドゥルワカシー』=まるごとすりつぶすので食物繊維もたっぷり。沖縄の言葉で“ドゥル”=泥“ワカシ”=沸かす、煮るという意味。『ドゥルワカシー』の直訳は“泥のようなものを煮る”という意味なんですね。こちらもある意味そのままの方言(笑)。

⑤ラフテー

琉球料理は「豚に始まり豚に終わる」と言われ、豚肉はもちろんのこと、内臓や顔、耳、血までも余すところなく使いきることでも知られており、特に皮つき三枚肉がよく使われる。豚肉がよく使われるのは、琉球王朝時代の中国との交流の影響で、豚肉文化が発達した影響もある。沖縄に豚が輸入されたのは1392年頃、農家の飼料が貧しく普及しなかったようですが、1605年頃に中国からいもが導入され、飼料が豊富になったためようやく豚が一般農家に普及していったよう。内地では日本に仏教が伝来し、678年に天武天皇が肉食禁止令を発布し、長年肉を食べることが禁じられていた。沖縄では日本の食肉禁忌は伝わっていたが根付かなかったので、法事の時でも豚肉が使われおりました。そんな沖縄県の豚肉料理で特に有名なのが「ラフテー」です。角煮との大きな違いは、皮付きであること。皮つきの豚の三枚肉の角煮で、砂糖、醤油、泡盛で気長に煮込んだものです。軟らかく、箸で簡単に切れ、皮のとろけるような口当たりが特徴です。食べると遠くに残る泡盛の香りが楽しめ、まさに泡盛がさらに飲みたくなるアテですね(笑)

⑥3点盛り(ターンムの素揚げ、ミヌダル、ゴーヤの梅酢漬け)

田芋(ターンム)

沖縄の伝統野菜のひとつ。季節を問わず植え付けができるようで、需要の多い盆や正月向けに植え付けられることが多いようです。親芋の周りに子芋が付くことから“子孫繁栄”につながり、昔から縁起物として食べられています。内地でいう里芋ややつ頭のようなものですかね?以前バイヤー時代にも仕入れたいと思いお願いしたのですが、病気が出たとかで原体を見たこともないので、次回は畑を狙いたいと思いました!

ゴーヤの梅酢漬け

沖縄の伝統野菜のひとつのゴーヤ。今では内地でどんどん作られ、出荷量のトップは沖縄県の7,130tで、シェアでは39.8%となっておりますが、2位は宮崎県で14.5%、3位は鹿児島県。今ではどこでもつくられることもあり、沖縄色がうすれてきている伝統野菜のひとつ。でも原点は沖縄なんですよね!そんなことを思いながら一口!わぁ!美味~♪泡盛くださーい(笑)梅酢の何ともいえないこずっぱさがあとひきますね。苦味と酸味まさに、沖縄の気候を乗り越えるためのしょくの原点なのかもと思いながら大切に食しました。

ミヌダル

豚のロース肉の薄切りに黒ゴマだれをまぶして蒸しあげたもの。今では幻となりつつあると言われている料理では家庭では見かけなくなりました。豚肉を覆っている黒ごまが"ミノ”を連想させることから名付けられたとも。また、真っ黒な仕上がりから「黒肉(クルジン)」とも呼ばれるそう。蒸すことで脂身が落ちるため、見た目のインパクトに反して味はあっさりしており、イカ墨を加えてより黒く、またコクを出して仕上げることもあるそうで、昔から祝い料理として使われているそうです。今回は簡易な三点盛りですが、王朝時代から使われている豪華な前菜入れの東道盆(トゥンダーブン)に、手の込んだ前菜を7~9品盛り合わせるそうですが、ミヌダルもその一品として用いられるようです。冷めても味が変わらず、常温で食べるというのも、暑い沖縄ならではのお料理かと。そしてねっとりなゴマの余韻で泡盛がまたすすみます。泡盛をたくさん飲みたくなるアテのようなお料理が多いですね(笑)。

首里城のお足元、赤田が広がる原風景に想い馳せながら是非一度お立ち寄りくやさーい!

投稿者プロフィール

小堀 夏佳
小堀 夏佳愛の野菜伝道師
野菜に魅せられ、全国津々浦々を駆け巡り、愛とWKWK♪ (ワクワク)をモットーに、野菜のトータルプロデュースを展開中。座右の銘は、「野菜(Yasai)には愛(ai)がある!」。日本野菜テロワール協会代表理事