貝沢ふくだち菜(秋田県伝統野菜)

秋田県雄勝郡羽後町貝沢地区

秋田県南部の横手盆地は国内有数の豪雪地帯。この地方では春にトウ立ちした白菜や青菜などのアブラナ科の野菜を「ふくだち」「ふくたち」として食する習慣があったそう。秋に種を播き、一度成長したものが、雪の下でじっと耐え、雪が解けた後に新芽を伸ばしトウ立ちしたものを「ふくだち」「ふくたち」と称してわずかなほろ苦さが甘みを一層引き立たて、春を告げる野菜として土着。かつては貝沢集落全体で栽培されていたものとのことですが、現在は中川さん他数戸だけとのことです。令和元年度羽後町貝沢の故中川國雄さんが自家採種しながら栽培してきた「貝沢ふくだち菜」が「あきた伝統野菜」に選定されました。「福が立つ」とは地域と先代の想いが詰まった野菜。岡山県や静岡県、長崎県雲仙市の岩崎政利さんが栽培されている福立菜という野菜とも何かご縁があるかもしれません。

生産者:中川文子(65歳)・瑞穂(38歳)さん他

生産地:秋田県雄勝郡羽後町貝沢地区

自家採種歴:50年以上(中川さんのおじいさんの時代からなので推定約90年)

面積:0.3アール

生産時期:4月中旬~5月初旬(毎年9月20日頃播種)

主な調理法:おひたし、炒め物など

特徴

種を受け継ぎ、秋田県羽後町貝沢地区露地栽培されてきた貝沢ふくだち菜。収穫していくと、次々と茎を伸ばし新芽を出してくる生命力の強い野菜甘さ野性味を感じる味わいは、この土地ならではの春を告げる野菜として大切にし 栽培されてきました。秋9月に種をまき、葉を伸ばした後、雪の下で冬を越させます。雪が消えた春、土と共に姿を現し伸ばしてきた茎や葉を目にすると「春の喜び」を感じると中川さんは言います。

1.概要

貝沢ふくだち菜は 春一番の「青菜」です。土の上に 高さ20センチほどに伸びた茎から柔らかい緑の葉が広がります。県南では、白菜や菜っ葉などの野菜が雪の下で冬を越え 春になって茎を伸ばしてきたものを「ふくたち」「ふくだち」として 食してきました。「貝沢ふくだち菜」は、貝沢集落で受け継がれてきた野菜です。

また、JAうごでは白菜のふくたちをハウスで栽培して「ひばり野ふくたち」(登録商標)として出荷しております。白菜を真冬に育て、ハウスで結球させずに収穫したものです。白菜とはかけ離れたその姿に驚かれる方もいますが、味も全く違うのです。旬は3月~4月のわずか2ヶ月間。雪深く冬の長い秋田県南地区の家庭では食卓に「ふくたち」が並ぶと、「おっ!いよいよふくたちの時期か、もうすぐ春だな」とあたたかい春に期待をふくらませます。貝沢ふくだち菜(在来種)ふくたち菜(F1種)は全く別ものですが、どちらも春を告げる秋田のお野菜です。どちらも楽しんでみてくださいね。

2.中川瑞穂さんインタビュー

左:中川文子さん 右:中川瑞穂さん

道の駅うごの特産品としてデビューするまでの軌跡を教えてください。

母(文子さん)が、ものごころついた頃には、おじいさんが栽培をされていた のだそう。母は、羽後町の歴史に詳しく、語り部秋田県指定無形民俗文化財猿倉人形芝居野中吉田人芝居)の活動もしており、年配の方に、語りを聞かせる機会があった際「むかしのふぐだち食いでな〜」との声を聞いたのだとか。ハウス栽培のふくたちが市場の主流になるにつれ、お年寄りたちから「昔のふくたちが食べたいなあ」という声が聞こえるようになり、 道の駅うごが開店する際、羽後町ならではの野菜がなにか無いかということになり、我が家で種を採り続けていた貝沢ふくだち菜を売りにしていこうということになり、今では道の駅うごの人気ご当地野菜になりました。

一束の中にいろいろな葉の種類があるように思いますが?

一本伸びてきたところを収穫すると脇芽がかなり出てきます。雄花と雌花じゃないかなあと勝手に思ってましたが、調べてみたら違いました。 茎に近い部分と地面に近い部分は葉の形が違うようです 送っていただいた写真の右は伸びたて、左は案外伸びたものだと思います。隣にも植えている人がいるのですが葉の形が違うので、長年の間に交雑したりしているのでしょうか。。詳しいことはわかりませんが。

系統の違う葉が?(左:かき菜のよう 右:白菜のよう)

中川家先祖代々紡いでこられた貝沢ふくだち菜は何年ぐらい種採りしてこられたのでしょうか?

昔はたぶんどこの家でも毎年ふくたちの種を採るのは当たり前だったと思うのでいつから採りはじめたかってのは祖父も覚えていなかった気がします。うちのじいさんがずーっと採っていたもので何年かはわからないのですが…。今年90歳になるうちのばあさんも小さい頃、朝市にふくたちを売りに行ったことがあると言っていたので、50年以上にはなると思いますよ。冬の間は一切農作物の無い雪国では昔からの食文化だったのだと思います

貝沢集落では、それぞれの家ごと、播種時期が違うため、さやのできる時期もさまざま。種を干している光景が。
一粒万倍の種

貝沢集落で自家用だけだった秘蔵っ子野菜が、直売所で購入できるようになり、たくさんの人に知って食べてもらえると、未来への種がつながるのだと思います春を呼ぶ縁起やさいです!道の駅うごで!

3.おうちで簡単!ベジてろ♪レシピ写真


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